enchantMOONは買ってはいけない(※)

(※)ただし、よくわかってない人に限る。

enchantMOONははっきり言って使い物にならないと思うよ。だから、ペンでお絵かきしたりささっと調べ物したり、情報を良い感じにキュレーションするのにすぐ使おう、なんて夢は見ないほうがいい。

こう言うと批判しているように思われるかもしれないけれど、そうではない。ハードウェアやOSなんてそんなものだよということだ。


Android1.0のことなんてもう誰も覚えてないと思うけど、あれを実際に使おうと思った人がいただろうか?1.5だって、なんとか世には出せるレベルにはなったものの、Androidがなんとかまともに動くようになるにはそこから一年、Foroyo(2.2)のリリースまで時間がかかった。Froyoは現在はシェアが3%程なのにもかかわらず、Googleの公式ライブラリのサポート対象になるなど、その健在ぶりをみせている。

Windowsだって、1.0なんて誰も知らなかった。1990年に3.0が出てその後3.1が出てやっと使えるレベルになり、95でブームを巻き起こし誰もが知る存在となった。

当時は情報の伝達と技術の進歩がいい感じにシンクロしていて、誰もが知るようになる頃には、誰もが使えるレベルまで完成度が上がっていたのだ。


ところが、今は違う。ごくごく一部の人にしか受け入れられないであろう製品が、ちょっとマーケティングを間違ってしまうと一気に一般まで広まってしまう。そうなると、評価は一人歩きしてしまい、誰でも使えるようなレベルのものが求められるようになってしまう。

そんな中で、 enchantMOONがすぐに生活を変える魔法の道具だと思って買おうとしている人がいたら全力で止めてほしい。怖いのは売れないことではなく、本来対象にならない人の手に渡ってしまい悪評を広められることなのだ。一度下がった評判を回復するのは難しい。

そして、それはenchantMOONだけの問題では済まされない。折しもMakersブームでハードウェアベンチャーへの期待が高まっている。ブームというか、バブルと言っていいかも知れない。実際にハードウェアを製造、開発しているベンチャーなんてほとんどない、つまり実体なんてないのにその周りだけが盛り上がっている。

そこで、数少ない実体の一つでも大きな失敗があれば、泡は小さくも存在していた他の実体までをも巻き込んで崩れてしまうかも知れない。


これはハードやOSに限らず、文化の根付いてないサービスをやる上で気をつけるべきことだ。ネットサービスで言えばクーポンサービスを思い出す。必要以上に急激なスピードで拡大してしまって、店舗のケアが出来ないような体制になってしまった。そして失敗が起こった。その失敗のお陰であらゆるクーポンサービスの評価が下がってしまい、業界は縮小していった。

昨今は次から次へと新しいサービスが立ち上がり、そのどれもがそんな危うさを抱えながらも急激な速度で成長することばかりを目指しているように見える。

なにもない、全くのゼロから始めたスタートアップであればそれは仕方のない部分もあるかも知れない。だが今回は違う。すでにそれなりの資本を持った会社が別の分野に参入するわけだ。資金力を持って新規分野に参入するのが悪いというわけではない。ただ、焼き畑はやってはならない。

過剰な期待をして買って、期待と違ったからといって悪評を振り撒くのは焼き畑を誘発しているようなものだ。enchantMOONは、使えるようになるまで年単位の時間がかかる端末だ。だから、モルモットになるのが嫌な人は悪いこと言わないから買うのを止めましょう。早く買ったってなにもいいことないよ。


ちなみに私は生粋のモルモット資質を持ち合わせているのでタッチ&トライイベントにも行ったし、注文もしている。私はゆっくり見守るつもりだ。年内に少なくとも1度、出来れば2度くらい大きなアップデートをして欲しいし、それができるくらいに開発者のモチベーションが持つような評価を得て欲しいと願っている。


7/3 追記
ブックマークしたうちの10%弱くらいが「すぐに使える」なんて思ってる人は買ってない、ガジェオタしか知らない、というブクコメ残してる。正確な数は知らないけど5000台とかそれくらいのレベルの数を出荷予定と聞いているんだけど、それを考慮した上でのコメントなのだろうか?

広意味でのガジェオタなんて無数にいるし、enchantMOONが合うくらい人柱レベルが高い人はそこまでいないと思うという話で、5000という数字に対する認識が違うのかもしれない。読んでもらえればわかるが全く売れなきゃいいって話ではなく、売れすぎだということを言っている。

バーチャルアイテムとは違って、リアルなモノは数出りゃいいってものじゃないのだよ。