TestFlight買収に見る無料サービスの怖さ

なにかが「無料」ある場合にはなぜそれが無料なのかを十分に考えないといけない。

ケータイ端末が無料なのは、通信料など他の費用でその分を回収しているから、というのは比較的分かりやすいが、これがウェブサービスとなるとけっこう複雑になってくる。

GoogleGmail, Google Drive, その他さまざまな質の高いサービスを無料で提供しているが、それらにかかる費用は広告によってもたらされた利益で賄われている。GmailはともかくGoogle Driveなどは検索とは直接関係がない。Googleほど有名であれば、彼らが検索連動広告で無尽蔵の収入を得ているから、とわかるのだが、利益構造のわからない会社が無料でこれほどのサービス提供していたとしたら、なにか裏があると思ったほうがいい。

よくあるのが、個人情報を収集されているとかそういった類のものなのだが、スタートアップが提供しているサービスの場合はちょっと状況が違う。

スタートアップ提供しているサービスは、利益は度外視してユーザ数やPVなどを増やし、規模が十分になってからビジネスモデルを考えるという戦略をとっている場合が多い。一定の容量だったり回数まで無料で使え、それ以上を求めるユーザから課金するフリーミアムモデルが定番だ。

利益が出るまでは増資によって資金調達するので、直近で収益がなくても特別裏があるわけではない。

ParseというBaaSサービスがある。2013年4月にFacebookに買収されたが、2011年までに$7Mを調達し、優秀な技術者を多く抱え、REST APIからiOS, Android, JavaScriptなどの各種でほぼ同機能でかつエレガントなクライアントAPIを提供していた。
Parseのビジネスモデルはフリーミアムモデルだ。スケールするビジネスなので最初は赤字でもユーザを獲得していく必要があるので、無料でも充実した機能を提供していたし、有料プランもちゃんと用意されていた。

Facebookに買収された後も、とくにFacebook色に染まることもなく、それまでと変わらずサービスが続いている。


TestFlightを2012/3に買収したBurstlyはそれまでに$7.3Mを調達しているので当面は赤字でも良いサービスを提供しているし、普通に資金調達は出来るだろうと思っていた。

買収から1年後には、サービス拡大路線を示す様に、はAndroid版を公開。
https://twitter.com/itog/status/306253802061848578

ところが、、、TestFlightは、無料プランしか持たなかった。

たとえ売上が小さかったとしても、有料プランあるいは他の収益構造がないというのは不自然だった。有料プランがいつ発表されるのか、どの様に課金されるのかというのはずっと気になっていたのだけれど、まさかの結末を迎えることになる。

突然Android版終了のお知らせ。

この時点では原因がわかってなかったので、ユーザの声が上がれば存続の可能性もあるんじゃないかと思っていたんだけれど、Appleの買収されることが明らかに。

最近は先のParseの例のように、買収をしても元のサービスを継続する例が多い気がしていたのだが、iOSAndroidのようなドコンペティター関係だと致し方ない。先に有料プランがあれば、少なくとも契約期間内はサービスを継続しなくてはならなかったかもしれないけれど、そんなことを言っても後の祭りだね、、、

無料ツールにはこういった危険があることも意識しておかなくてはいけない。

開発ツールの囲い込みは、競合側の開発者にとってはかなりの嫌がらせ。Appleがこういうことをやってくるということは、逆にGoogleが仕掛ける場合だって考えられちゃうね。これを期に、AppleGoogleによる開発者支援ツールの奪い合いが始まってしまわないことを願います、、、