チームで起業するのはセオリーか?

近ごろのインキュベーションプログラムにおいて、応募の必須あるいは推奨条件として、チームでの応募であることが求められることが多い。シリコンバレーでも「チームに投資する」というのは最重要基準の一つになっている。

会社経営はチームスポーツに似ている。選手一人一人に様々な役割があってそれらが上手いこと噛み合わなければ結果を出すことは出来ない。「良いチームを作ること」が勝利への近道だ、というのはセオリーだといえよう。

ただしこれは「最初にチーム作りから始めることがセオリーだ」という事にはならない。

スポーツを真剣にやっていたら誰だって当然勝ちたい。個人スポーツなら自分の気持ちを自分にぶつけるだけだからいいんだけど、チームスポーツの場合そうはいかない。個人の能力とチームの連携力の両方がなければ勝つことは出来ない。

勝てないサッカーチームがあったとする。

ゴールを決めきれなかったFWは次は決めてやろうとシュートの練習をする。相手に当たり負けて得点を決められたDFは当たり負けをしないようにトレーニングをする。個人の能力を磨くことによってチーム全体の力を上げるという考えだ。

チーム練習では、パスの組み立て方を練習してチャンスをより多く作り出そうとする。また、組織的な守備を練習することで一人では当たり負けても二人、三人で囲んで潰すようにする。メンバーとの連携力を高めて、個人の能力だけではカバー出来ない部分を補うことでチーム力を上げる。

これらは車の両輪で、どちらかが欠けても良いチームなんてつくれない。

起業家予備軍や起業間もないスタートアップっていうのは、まだ試合にも出れていないような状態だ。サッカーやりたいけどメンバーがいないのでできません、と言ってメンバーを探すのがいいのか?あるいは一人でボール蹴ったり走りこみをして、個人の能力を磨いていくのか。

確実に結果に結びつくのは個人技の方だ。

起業の世界では、一人でも試合にエントリーすることができる。そこで結果を出せばチームに入りたいという人も出てくるかも知れないし、他のチームに入らないかとお誘いを受けることがあるかも知れない。即席のチームはすぐにバラバラになってしまうかも知れないが、身につけた技術は決して自分を裏切ることはない。

個人でできることにはいつか限界が来る。「良いチーム」が理想であることは変わりない。しかし、それは初めからチームありきではない。

チームじゃないことを理由に先に進まないよりも、一人でも試合にエントリーして他のチームと同じグラウンドに立ったら、次にすべきことはなにかが自ずとわかってくると思う。