Google I/O で明かされていたAndroidの方向転換

Androidが発表されて以来初めて新バージョンが発表されず、Androidへの今後の取組が示されることのなかったかのようにみえたGoogle I/Oの基調講演。ところが、そこにはGoogleAndroidに対する大きな方向転換が隠されていた。

2つの大きな機能追加

AndroidのOS自体のバージョンアップは発表されなかったが、Androidで大きな機能が2つ発表された。このどちらもが、これまでのマイナーバージョンアップと同等かそれ以上の機能追加と言ってもいいだろう。

追加されたのは、位置情報機能とゲームサポート機能だ。

位置情報機能は3つのAPIが発表された。

  • GPS,WiFi,基地局情報および加速度センサなどの情報を統合した位置情報プロバイダ
  • ジオフェンシング
  • 行動認識(止まっているか、歩行中か、自転車か車に載っているか)

ゲームサポート機能は「Play Game Service」と名付けられ、iOSのGameCenter、Kindle fireのGameCircleに対抗した機能だ。以下の機能がサポートされる。

  • Cloud Save
  • Achievement
  • Leaderboards
  • マルチプレーヤー
Google Play Service

これらの機能は「Google Play Service」で提供される。

ソフトウェア的な解釈としては、AndroidAPIより一段抽象化されたレイヤーだ。
例えば位置情報の取得にかんして、これまでのAPIGPSWiFiでの位置情報を取得する機能をサポートしていた。この機能を使う場合、開発者は少なからずGPSWiFiでの位置推定の仕組みを知らなければいけない。
今回サポートされたFusedLocationでは一段抽象化レベルの上がったサービスを提供しているので、その裏で動いている仕組みを理解する必要がない。

適度に抽象化されることにより、これらの機能がより多くのアプリケーションで使われることが期待できるだろう。

このGoogle Play Serviceは、Android本体(AOSP)の機能としてではなく、アドオンライブラリとしてサポートされる。Googleはこれまでも一部サービスをアドオンライブラリで提供してきてはいるが、あくまで本線はAndroid本体であった。それが、今回の大きな機能追加はAndroidではなく、アドオンライブラリとなった。

ロケーション機能、ゲーム機能と分けて発表されたので一つの大きな変更とは捉えられず、メディアではあまり大きく取り上げられていないが、これはAndroidの方向性という点においてはタブレットのサポートに次ぐくらいの変更なんじゃないだろうか。

Play Serviceの表と裏

Google Play Serviceがアドオンライブラリで提供される利点は、Froyo以降をサポートし、今すぐ使えるという点だ。これまではAndroidが新しい機能をサポートしても古いバージョンのサポートを考えなければいけなかったために採用できないことがあったが、Play Serviceであればバージョンを意識せず(現時点で98%以上の端末がFroyo以上)に採用できる。

このようにアプリベンダにとっては嬉しい機能が追加される一方で、この機能がGoogleプロプライエタリなライブラリでサポートされるということの影響も忘れてはならない。オープンソースではないので、開発者は位置情報の取得がどのような仕組みで行われているかを知ることは出来ない。そして、Google Playを搭載しないのAOSPプロダクトでは使うことが出来ない。

Androidの方向転換

Androidは市場シェアが拡大するにつて、フラグメンテーションが何かと問題になっていた。今回の発表では、これに対する施策として、OSのアップデートやPDKのようなアプローチではなく、プロプライエタリなライブラリで最新機種のみならず市場に出回るほとんどのAndroid端末をサポートするという方法をとった。

これは、これまでオープン路線で進んできたAndroidの方向性とは異なっている。Google Play Serviceの導入で、AndroidはAOSP路線から「Google Android」の強化へと舵を切ったのだ。