国内クラウドファンディングの理想と現実、そしてこれから

Kickstarterがすごい。

Kickstarterは、モノやサービスを作るときに、資金を一般から公募する、クラウドファンディングと呼ばれるサービスの代表的な存在。これが最近すごいことになっている。

つい一ヶ月ほど前に、ゲームのファンディングで3.2M$集めたのが話題になったばかりなのだが、そのすぐ後に、スマートウォッチPebbleがKickstarterで200万ドルを集めた理由と話題を集め、今日の時点ではなんと6.7M$を集めている。

wikipediaに過去の資金額トップ10が掲載されているが、上位10プロジェクトのうち9件がこの半年、1M$を超えた上位4プロジェクト(Pebbleは未掲載)が今年2月以降、ところを見ても勢いづいてることが伺える。

RankProject nameAuthorCategory % fundedTotal USDBackersClosing dateLink
1 Double Fine AdventureDouble Fine and 2 Player Productions Video Games 834 3,336,371 87,142 2012-03-13 [1]
2 Wasteland 2InXile EntertainmentVideo Games 325 2,933,252 61,290 2012-04-17 [2]
3 Elevation Dock: The Best Dock For iPhone Casey Hopkins Design 1,952 1,464,706 12,521 2012-02-11 [3]
4 The Order of the Stick Reprint Drive Rich BurlewComics 2,171 1,254,120 14,952 2012-02-21 [4]
5 TikTok+LunaTik Multi-Touch Watch Kits Scott Wilson Design 6,283 942,578 13,512 2010-12-16 [5]
6 Hidden Radio & BlueTooth Speaker John VDN + Vitor Santa Maria Design 751 938,771 5,358 2012-01-18 [6]
7 Printrbot: Your First 3D Printer Brook Drumm Technology 3,323 830,827 1,808 2011-12-17 [7]
8 Twine: Listen to your world, talk to the internet Supermechanical Technology 1,589 556,541 3,966 2012-01-03 [8]
9 CineSkates Camera Sliders Justin Jensen Design 2,432 486,518 2,019 2011-10-14 [9]
10 PID-Controlled Espresso Machine Gleb Polyakov and Igor Zamlinsky Design 1,847 369,569 1,546 2012-01-20 [10]

http://en.wikipedia.org/wiki/Kickstarter

この手のサービスは他にもいくつかあるようだけど、今のところKickstarterの一人勝ち。そりゃここまで話題になれば他に出す理由はないよね。

残念なことに、Kickstarterにプロジェクトを出せるのはアメリカ人かアメリカの法人に限る。日本の個人や会社はそのままだと出せない。日本人でもこういうの出したいよね?という考えは当然あって、日本は日本でクラウドファンディングサービスがいくつかある。

ニュース番組でも取り上げられ、注目度が上がっている事が伺える。

国内クラウドファンディングの現状と課題

代表例として、クラウドファンディング - CAMPFIRE (キャンプファイヤー)を取り上げて国内のクラウドファンディングの現状をみてみよう。
週明け時点で、プロジェクト一覧から4ページ分をみてみた。36プロジェクト中以下の15プロジェクトが成立。

SUCCESS co-ba libraryプロジェクト \1933500 134人
SUCCESS スライドショーで世界を一つに繋ごうプロジェクト \1262000 15日 187人
SUCCESS 押し花アート作品集 『flora』 の書籍化プロジェクト \533500 22日 77人
SUCCESS 「東京ナイロンキャバレー」開催 \137500 × 25人
SUCCESS To remake your Memories Project \115000 22人
SUCCESS 日本酒の定期購入サービス、「SAKELIFE」 \805000 × 108人
SUCCESS LinkWattを未電化地域へ! \262000 4日 52人
SUCCESS 「胃カメラproject」 \93500 13時間 13人
SUCCESS 石巻市の海辺と山の仮設住宅団地のコミニケーション作りのお手伝い \151000 15日 58人
SUCCESS 3.11までの原発の歴史を伝える「原発絵本プロジェクト」 \679265 199人
SUCCESS “PLAY„ FOR TOHOKU 〜遊びを東北へ!紙巻き式オルゴールを贈ろう〜 \219100 × 46人
SUCCESS 『ふるさとdeやきもの教室』in 気仙沼 \285500 45人
SUCCESS 「イタリアで福島の子供たちの元気な体と心を育む」プロジェクト \517000 11日 73人
SUCCESS 疎開・保養プロジェクト・大阪 \271500 71人
SUCCESS Japan-Pano-Journalism〜seasonII \323000 62人
プロジェクトの種類

Kickstarterに載るプロジェクトは上記の成功事例を見てもわかるように、ガジェット系が多い。一方Campfireの成立案件はどういうものかというと、チャリティ系が多い。成立している15プロジェクトのうち7プロジェクトで震災関係のキーワードが含まれている。

もちろん、チャリティ系プロジェクトを批判するわけではないし、ガジェットこそが最高、と言ってるわけではない。Campfireはクリエイティブ系を重視しているような印象なので、運営者の意図からはそれほどずれてないんだと思う。

ただ、Kickstarterが実現しているようなクラウドファンディングとは明らかな違いがある。

その違いは、このエントリがうまく説明している。
http://www.venturenow.jp/column/ogawa/20100907008722.html
購入と寄付というファンディングの2面性のうち、国内ではいまのところ、寄付面でしか成立できていないというのが現状だ。

成立案件の規模

Campfireで成立したプロジェクトの成立額を見てみると直近15の成立プロジェクトの中では、200人、200万円行ったものがない。

前述のように、寄付がメインなので、払った見返りというのには限界があるので一人あたりの支援額に上限があのだろう。200万円くらいだと、人々の注目を集めるのはちょっと難しい。

ちなみに、競合のReadyforでは750万を超えた支援が集まっているプロジェクト( 陸前高田市の空っぽの図書室を本でいっぱいにしようプロジェクト(吉田晃子 2012/03/11 公開) - クラウドファンディング Readyfor (レディーフォー) )があり、もう少し話題になってもいいと思うが、Readyforはほぼチャリティ一色なので他のクラスタに伝わりづらいところがあるのかもしれない。

手数料

残念なことに、、、Campfireは手数料が高い。

Webサービスのようにスケールするもの全般に言えることだが、利用者が増えれば増えるほど利用単価は安くできるわけで、そこはさすがのKickstarterKickstarterの手数料は決済込で10%以下。

http://www.kickstarter.com/start

What fees does Kickstarter charge?
Kickstarter collects a 5% fee from the project’s funding total if and only if a project is successfully funded. Amazon (our payments processor) also charges credit card processing fees that generally work out to 3-5%.

一方のCampfireは20%.

CAMPFIREの手数料はいくらですか?
目標金額を達成した場合は、集めた総額の20%(クレジットカード利用手数料を含む)がCAMPFIREの手数料となります。残りの80%がプロジェクトオーナーへ。

クレジットカード手数料が高いのもあるけど、もうちょっと頑張ってほしい。他のサービスでは決済システムがなくて直接銀行振込しかない、なんてのもあったため、それよりはいいのかもしれないが。

※5/21追記
決済手数料が高いというのはここからの情報。
http://jp.techcrunch.com/archives/jp20110603-campfire/

CAMPFIREは集めた資金のうち20パーセント(うち7パーセントが決済手数料なので実質は13パーセント)を彼らの取り分としている。

しかし、Paypalのページをみると一番高くても3.6%+40円となっていてどこから7%という数字が出てきたのか不明。
https://www.paypal.com/jp/cgi-bin/webscr?cmd=_display-receiving-fees-outside&countries=

ガジェット系クラウドファンディングの現状、今後

Kickstarterという大きな成功事例があって、それがアメリカ限定サービスなので日本でも同じようにやれば成功するんじゃないか、という理想がある一方で、上記にあげたように現実は成功とはかけ離れた状況だ。

日本国内では法律や文化など様々な違いがあるので、こういう仕組みは受け入れられないのかもしれない。それでも、初期投資のリスクを軽減してプロジェクトを開始することが出来るという点において、ガジェット系でクラウドファンディングに期待を寄せる人は少なくないと思う。

Cerevo Dashの登場、初めての成功事例、そして、、、

そうした期待を受けてか、Campfireをベースに、ガジェット専用のクラウドファンディングサイトCerevo DashをCerevoが立ち上げた。

出だしのプロジェクトはCerevo自身が出した一つだけで公開直後にいくらか集まったものの、しばらく停滞がつづてちょっと厳しいんじゃないかと思ったが、最後の追い上げで成立。国内でもガジェットにクラウドファンディングが使えるということを実例で示した、大きな一歩だと思う。

そして、ピグマルもそれに続こうとしている。

Android対応押しボタンスイッチ「FourBeat」のファンドを Cerevo Dashで公募を開始した。
FourBeat :「リアル」が伝わるAndroid対応押しボタンスイッチ FourBeat - Cerevo DASH(セレボ ダッシュ)

何のコネもなく、どことも資本関係もない、個人開発状態のプロジェクトがどこまで行けるのか。大きなチャレンジだけど、成立させることが出来れば自分にとってはもちろん、他の個人開発をしている人にとっても、夢が広がるんじゃないかと思う。

ご支援のほどお願いします。